日本各地で、いま、ホテルリニューアル計画がますます活発になってきています。
特に連日外国人観光客で賑わう繁華街や下町界隈では、ホテル建築のお知らせ看板がいたるところに立ち並び、インバウンド増加に伴うホテル特需の勢いが薄れる気配はありません。
そんな背景の中で、多くの不動産業者様や、これからホテル事業に新規参入を検討されているオーナー様から、
「既存建物をどのようなホテルに変えることができるか?(ローコストで)」
「ホテルに転用したいが、用途変更申請ができる建物なのか?」
という「ホテルリニューアル」についてのお問い合わせを、多数いただきます。
今回は、これらお問い合わせの内容にお答えすべく、いくつかのリニューアル事例を振り返りながら、ホテルリニューアルにおける改装ポイントなどを、ほんの少しご紹介したいと思います。皆様のホテル事業計画のお役に立てれば幸いです。
雑居ビルから長期滞在型レジデンシャルホテルへ
「センチュリオンホテルレジデンシャル赤坂 -2006-」
まだ「インバウンド」というワードすら耳に新しかった2006年。
赤坂の歓楽街の中心にある古びた雑居ビルを改装し、ビジネスや観光インバウンド向けに、当時はまだ珍しい宿泊業態とされていた「長期滞在型レジデンシャルホテル」として再生させるプロジェクトを、12年前に企画提案しました。赤坂のメイン通り2面に接する絶好の立地条件を最大限に生かし、赤坂というハイソな街と高品位なホテルブランドの印象をデザインの力で融合させ、異彩な輝きを放つシンボリックなホテルとして生まれ変わりました。
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遊休オフィスビルを、駅前型ビジネスホテルに用途変更!
ローコストリニューアルを実現
「センチュリオンホテルクラシック奈良 -2017-」
駅から徒歩2分という好立地の、延べ床900坪7フロアのオフィスビルを、低予算でビジネス/観光両方対応できる、駅前型ビジネスホテルにフル改装しました。
オフィスビルからの改装の場合、改装前の間仕切りはそのままホテル仕様に転用することができない(もしくは間仕切り自体が存在しない)ことが多いため、新たに区画壁を設けなければなりません。その際、既存の窓を客室採光に生かせる間取りにすると、窓を改造したり、新たに外壁に開口を設ける必要がなく、コスト減につながります。
また、外壁材は極力現状利用して、塗装+ライトアップ演出程度とし、
メインエントランス周り=ホテルの「顔」のみを集中的にデザインすることで、バランスよくメリハリのついたローコストリニューアルとなりました。
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⬇︎after”松明”をイメージした屋外ブラケット照明を等間隔に設置。
賃貸マンションから飲食店複合型ハイブランドシティホテルに再生!
「ザ・センチュリオンホテルクラシック赤坂 -2017-」
お問い合わせいただく案件の中で最も多いのが「現状マンション(共同住宅用途)をホテルに変えられないか?」という内容です。実績例としては、去年開業した「ザ・センチュリオンホテルクラシック赤坂」があります。赤坂のど真ん中の好立地にあり、もともと賃貸マンションだった時の間仕切りや空調給排水設備を生かして、約1300坪の飲食店付きオールスイートタイプのシティホテルにリニューアルしました。
⬆︎before…(入り口外観)
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⬆︎before…(エントランス)
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マンションとホテルは、設備インフラ的にはほぼ同じなので、施工的にはホテルに転用しやすいケースですが、100㎡を超える規模のホテルにする場合は、確認申請(用途変更)が必要になります。
その際注意しなければならないのが「容積率の緩和」です。平成9年9月1日以降に新築・増築された共同住宅は、建築基準法改正により共用部分の面積が容積不算入の扱いを受けている可能性が高くなっています。そのため、「共同住宅」から「ホテル・旅館」に用途変更を行うと、共同住宅に適用されていた容積率の緩和が適用されなくなり、容積率の上限を超えることがあるので特に注意が必要です。
もし仮に容積オーバーとなった場合は、コンクリートブロックなどで封鎖し滅室する措置が必要とされるか、管轄する行政によっては、床抜きが必要とまで言われる場合もあります。となると、「そもそもホテル計画が現実的ではない」ことになりかねません。
つまり、プロジェクトの進行を左右する「初動の調査」が非常に重要となります。